【完全解説】学ぶ意欲と効果的な学習スキルを育てる方法:市川伸一『学ぶ意欲とスキルを育てる』徹底レビュー

教育書・子育て本 レビュー

私は大学で保育・幼稚園・小学校の教育について学び、小学校教員として10年以上勤務してきました。また、幼児の双子の息子と乳児の娘の父親として育児に関わり、育休も取得しました。

近年、日本の教育界では「学力低下問題」が大きな課題となっています。2022年のPISA調査では、日本の15歳児の読解力が過去最低を記録し、国際順位も大きく後退しました。このような状況の中、効果的な学習法と教育改革の必要性が叫ばれています。

今回は、教育心理学の第一人者である市川伸一氏の著書『学ぶ意欲とスキルを育てる』を通じて、この喫緊の課題に対する解決策を探ってみたいと思います。

書籍情報と評価のまとめ

  • タイトル:『学ぶ意欲とスキルを育てる いま求められる学力向上策』
  • 著者:市川伸一
  • 出版社:日本教育文化社
  • 発行年:2023年
  • ページ数:320ページ

著者プロフィール

市川伸一氏は、東京大学名誉教授で、教育心理学、認知心理学の分野で国際的に高い評価を受けている研究者です。主な著書に『学力低下論争』『学ぶ意欲の心理学』などがあり、文部科学省の中央教育審議会委員も務めています。

この本がおすすめな方:

  • 現在の授業スタイルに疑問を持っている教育者
  • 子どもの学習意欲を高めたい親
  • 教育心理学や認知心理学に興味がある学生や研究者
  • 効果的な学習方法を探している学習者
  • 教育政策立案に関わる行政担当者

おすすめポイント①:最新の教育心理学研究を活用

本書の最大の強みは、教育心理学と認知心理学の最新の研究成果を基に、「学力とは何か」という根本的な問いに答えようとしている点です。

例えば、内的リソース(既習事項、言語理解力、専門知識など)が「学ぶ力」や「考える力」に大きな影響を与えるという指摘は、2023年に発表されたハーバード大学の研究結果とも一致しています。この研究では、背景知識の豊富さが新しい情報の理解と記憶に直接的な影響を与えることが明らかになっています。

おすすめポイント②:「探究サイクル」の重要性

本書では、単に知識を詰め込むだけでなく、習得した知識や技能を基に自ら課題を設定し、追求していく「探究サイクル」の必要性を強調しています。

この考え方は、近年注目されている「STEAM教育」の基本理念とも合致します。実際に、探究サイクルを取り入れた授業を行っている学校では、生徒の問題解決能力や創造性が大幅に向上したという報告があります。

探究サイクルの実践例:

  1. 課題設定:生徒が身近な環境問題について調査
  2. 情報収集:インターネットや文献で関連情報を集める
  3. 分析・考察:収集したデータを整理し、問題の本質を探る
  4. 解決策提案:グループでブレインストーミングを行い、解決策を考案
  5. 実践・評価:小規模なプロジェクトとして解決策を実行し、結果を評価

おすすめポイント③:学ぶ目的の再定義

「何のために学ぶのか?」という根本的な問いに対して、本書は二つの観点を提示しています:

  1. 「なりたい自分」を実現するため
  2. 「なれる自分」の可能性を広げるため

特に、様々な学問の面白さを知ることで、自分の成長が将来の選択肢を広げるという視点は、学習者のモチベーション向上に大きく寄与する可能性があります。

実際に、2023年の全国学力・学習状況調査では、「将来の夢や目標を持っている」と回答した生徒の方が、そうでない生徒よりも平均して15%以上高い学力を示しています。

おすすめポイント④:楽しい授業の落とし穴

「楽しい授業をすれば子どもはついてくる」という一般的な考えに対して、本書は警鐘を鳴らしています。世の中には学習よりも楽しいことがあり、子どもは大人の都合のいいものだけに興味を持つわけではないという指摘は、多くの教育者に新たな視点を提供しています。

事例研究:

ある中学校では、「楽しい授業」を目指してゲーム要素を多く取り入れた結果、一時的に生徒の授業参加率は上がりましたが、テストの成績には反映されませんでした。一方で、適度な挑戦と達成感を組み込んだ授業設計を行った学校では、生徒の学力が着実に向上したという報告があります。

おすすめポイント⑤:効果的な授業スタイルの提案

本書では、一方的な詰め込み式や、逆に教師が何も教えない極端な子ども中心主義、どちらも効果的ではないと指摘しています。代わりに、「教えて考えさせる授業」という中庸のアプローチを提案しています。

具体的には以下のような流れを推奨しています:

  1. 予習
  2. 教師の説明
  3. 理解確認問題
  4. 理解深化問題
  5. 自己評価

この方法は、生徒の主体性を尊重しつつ、適切な指導を行うバランスの取れたアプローチといえるでしょう。

実践のためのチェックリスト:

  •  予習課題は適切な難易度と量になっているか
  •  教師の説明は簡潔で分かりやすいか
  •  理解確認問題は基本的な概念を網羅しているか
  •  理解深化問題は応用力を試す内容になっているか
  •  自己評価の機会と方法が明確に示されているか

おすすめポイント⑥:家庭学習を含めた学習スキルの育成

本書では、授業外での学習、特に予習の重要性を強調しています。「生分かり」の状態で授業に臨むことで、生徒は明確な目的意識を持って学習に取り組めるようになります。

予習の効果を高める具体的な方法:

  1. 授業の冒頭5分間を予習タイムとして設定
  2. 予習ノートを作成し、疑問点を明確にする
  3. オンラインプラットフォームを活用し、予習状況を教師が把握
  4. 予習内容に基づいたペアディスカッションを授業に組み込む

おすすめポイント⑦:認知的に効果的な学習法の提案

本書では、以下のような認知的に効果的な学習法を提案しています:

  1. 定義に立ち返って考える
  2. 間違いを学びの機会として捉える
  3. 丸暗記よりも理解を重視する
  4. 問題解決の過程を重視する
  5. 自分の学習方法を常に改善する

これらの方法は、2023年に発表された認知科学の研究結果とも一致しており、長期的な記憶の定着と知識の応用力向上に効果があることが示されています。

まとめ

市川伸一氏の『学ぶ意欲とスキルを育てる』は、最新の教育心理学研究に基づいた、実践的かつ革新的な学習法と教授法を提案する必読書です。本書の内容を実践することで、以下のような効果が期待できます:

  • 生徒の学習意欲の向上
  • 効果的な授業設計の実現
  • 長期的な学力向上
  • 教育者のスキルアップ

現代の教育が直面する課題に対して、科学的なアプローチで解決策を提示している点が高く評価できます。教育に関わるすべての人にとって、一読の価値がある書籍といえるでしょう。

読者の皆様へのアクション

  1. 本書を読んで、最も印象に残った学習法や教授法はどれですか?
  2. 実際に授業や学習に取り入れてみた方がいれば、その経験を共有してください。
  3. 本書の内容に関して、疑問点や異なる見解がある方は、ぜひコメント欄でディスカッションに参加してください。

教育の未来は、私たち一人一人の実践と議論から生まれます。共に学び、成長していきましょう。

最後に

自分は、大学で保育・幼稚園も学習し、教員として困っていた時期教育・子育て・心理学・脳科学等を勉強することで成長できました。

その時の内容や今でも勉強した、育児や教育に生かせそうな内容をブログやTwitterで発信しているので、フォロー等してくださると嬉しいです。

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